「過去問でセマグルチドは完璧にしたけど、新薬が出たらどうしよう…」 国試直前、そんな不安を感じていませんか?
実は、近年の薬剤師国家試験は「現場のトレンド」や「社会問題」が色濃く反映される傾向にあります。
今、セマグルチド(GLP-1受容体作動薬)をはじめとするインクレチン関連薬が、大きな注目を集めているのをご存知でしょうか。 本来は糖尿病治療薬であるにもかかわらず、「糖尿病のない人が、美容目的のダイエットのために自由診療で購入・使用している」という不適切な実態が、SNSなどを中心に社会問題化しています。
こうした「社会的に話題の薬」は、国試の作問者も間違いなく注目します。 第109回、110回と連続でGLP-1関連が問われた流れから見ても、次に狙われるのは本命の新薬「GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド)」と考えています。
こんにちは! 病院薬剤師で、糖尿病薬物療法認定薬剤師のなおです。 国試直前のこの時期、頑張る受験生を応援すべく、今回は特別に「国試対策」の記事をお届けします!
次回の国試で出題が予想される「チルゼパチド」について、正しい知識を問う「ポイント解説」と、それを踏まえた「オリジナル予想問題」をセットで用意しました。
1. チルゼパチドって何?(セマグルチドとの違い)
これまで糖尿病治療の主役級だった「セマグルチド(オゼンピック、リベルサス)」は、GLP-1受容体作動薬という分類でした。
これに対し、今回紹介する「チルゼパチド(商品名:マンジャロ)」は、GIP/GLP-1受容体作動薬という新しいカテゴリーに分類されます。
ここが国試に出る! 📝
- セマグルチド: GLP-1受容体のみを刺激する。
- チルゼパチド: GIP受容体とGLP-1受容体の「2つ」を同時に刺激する(Dual Agonist)。
「GLP-1」だけでなく「GIP」もターゲットにしている点が最大の違いです。
2. 「GIP」ってなんの略?
国家試験では、アルファベットの略語が何を指すか問われることもあります。 ガイドブックの定義をおさらいしておきましょう。
- GIP: グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド (Glucose-dependent Insulinotropic Polypeptide)
- GLP-1: グルカゴン様ペプチド-1 (Glucagon-like Peptide-1)
どちらも食事を摂ると小腸から分泌されるホルモン(インクレチン)ですが、チルゼパチドはこの両方の作用を模倣することで、強力な血糖降下作用と体重減少効果を発揮します。
3. 覚えておくべき副作用と対策
薬理作用が強力な分、副作用の管理も重要です。 GLP-1受容体作動薬と同様に、使い始めには胃腸障害(悪心・嘔吐・下痢など)が出やすいのが特徴です。
また、シックデイ(発熱や下痢などで食事がとれない時)の対応も重要です。 ガイドブックの「シックデイカード」にあるように、「食事がとれていないのにいつも通り注射すると、低血糖のリスクがある」という点は、この薬でも共通の重要指導ポイントです。「食事が摂れないときは主治医に相談する」という指導は、国試の実務問題でも鉄板の選択肢ですね。
【実践編】オリジナル予想問題にチャレンジ!
基礎知識がついたところで、実際の試験形式で確認してみましょう。 これが解ければ、本番も怖くありません!
第1問(薬理・化学)
問1 チルゼパチドに関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体を選択的に遮断し、インスリン分泌を抑制する。
- グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体及びGLP-1受容体を刺激する。
- 血糖値が高い時にインスリン分泌を促進させる作用(血糖依存性)を示す。
- 分子内に脂肪酸による修飾構造を持たないため、DPP-4による分解を受けやすい。
- 1日1回、朝食前に経口投与する製剤である。
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正解:2、3
- ✅ 選択肢2(正):
チルゼパチド最大の特徴! GIPとGLP-1の「2つ(Dual)」の受容体を刺激します。 - ✅ 選択肢3(正):
これがインクレチン関連薬の重要なメリットです。SU剤などとは異なり、血糖値が高い時だけインスリンを出させる(血糖依存性)ため、単独使用では低血糖のリスクが低いという特徴があります。 - ❌ 選択肢4(誤):
セマグルチドと同様に、脂肪酸による修飾を持っています。これによりアルブミンと結合し、代謝を受けにくくすることで週1回投与を実現しています。 - ❌ 選択肢5(誤):
経口(リベルサス)ではなく、週1回の皮下注射(マンジャロ)です。
第2問(実務)
問2 2型糖尿病患者(55歳男性)に対し、チルゼパチド皮下注(マンジャロ皮下注アテオス)が新規に処方された。薬剤師が行う服薬指導として適切なのはどれか。2つ選べ。
- 「このお薬は、週1回 2.5mg から開始します。」
- 「効果が不十分な場合は、2週間ごとに増量することができます。」
- 「投与を忘れた場合、次の投与予定日まで24時間以上あれば、気づいた時点で直ちに投与してください。」
- 「食欲不振や吐き気などの胃腸症状が現れることがあります。」
- 「インスリン製剤ではないため、低血糖の心配はありません。」
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正解:1、4
実務では、具体的な数字(日数・用量)が狙われます。
- ✅ 選択肢1(正):
これが鉄板! チルゼパチドは胃腸障害を防ぐため、2.5mg(開始用量)からスタートし、4週間後に5mg(維持用量)へ増量します。いきなり維持用量の5mgからは始めません。 - ❌ 選択肢2(誤):
増量の間隔は「2週間」ではなく「4週間以上」です。焦って増やすと副作用が出やすいので注意が必要です。 - ❌ 選択肢3(誤):
打ち忘れた時のルールは「次回まで3日間(72時間)以上」あるかどうかです。24時間ではありません。ここもセマグルチド注と同様の知識で解けますが、数字は要チェック! - ✅ 選択肢4(正):
GLP-1受容体作動薬と同様に、使い始めの悪心・嘔吐・下痢などは頻度の高い副作用です。 - ❌ 選択肢5(誤):
SU剤やインスリンとの併用時はもちろん、単独でもシックデイ(食事がとれない時)などは低血糖リスクがあります。「低血糖は起きない」と言い切る選択肢は×です。
まとめ:ダブルの作用で覚えよう!
次回の国試で「チルゼパチド」という単語を見たら、以下の3つを思い出してください。
- GIPとGLP-1のダブル(2つ)の受容体に働く。
- GIPは「グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド」。
- 副作用は胃腸障害に注意(シックデイ対応も必須)。
この「ダブル作用」さえ押さえておけば、薬理の問題も実務の問題も怖くありません。 新しい薬もしっかりカバーして、合格を勝ち取りましょう!


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