「最近、マンジャロの処方が急に増えてきたな…」 「患者さんから『すごい痩せる薬があるんでしょ?』って聞かれたけど、どう答えよう?」
現場で働いていると、この「チルゼパチド(商品名:マンジャロ)」の話題を聞かない日はないですよね。 「従来のGLP-1受容体作動薬と何が違うの?」と聞かれて、即座に答えられるでしょうか?
実はこの薬、これまでの糖尿病治療薬とは一線を画す「世界初のメカニズム」を持っているんです。 今回は、現役薬剤師の視点から、チルゼパチドの「凄さ」と、投薬時に絶対に確認しなければならない「落とし穴(副作用)」について、分かりやすく解説します。
明日からの服薬指導に自信がつきますよ!
1. チルゼパチドってどんな薬?(世界初のメカニズム)
結論から言うと、チルゼパチドは「GIP」と「GLP-1」という2つのインクレチン受容体を同時に刺激する、世界初の薬です。
オゼンピックやトルリシティは「GLP-1」だけをターゲットにしていましたよね。 チルゼパチドは、そこに「GIP」というもう一つのホルモンの作用をプラスしたんです。
チルゼパチドが作用する2つのインクレチン(GLP-1とGIP)。
似ているようで、実は分泌される場所などが少し違います。試験や現場で聞かれた時にサッと答えられるよう、表で整理しておきましょう。
| 作用項目 | GLP-1 | GIP |
|---|---|---|
| 分泌細胞 | 小腸下部のL細胞 | 小腸上部のK細胞 |
| インスリン分泌 | 促進(血糖依存性) | 促進(血糖依存性) |
💡 ここがポイント!
表を見ると分かる通り、分泌場所(L細胞・K細胞)は異なりますが、どちらも「血糖依存性」にインスリン分泌を促進する点は共通しています。
「血糖値が高い時だけ働く」というこの性質のおかげで、チルゼパチドは強力な効果を持ちながら、単独使用では低血糖を起こしにくい(SU薬等とは違う)という大きなメリットがあるんですね。
この2つがタッグを組むことで、かつてないパワーを発揮するのが最大の特徴です。
2. 期待される「ダブルの効果」
では、具体的に何が凄いのでしょうか? 臨床試験の結果などから、以下の2点が注目されています。
① 強力な血糖降下作用
膵臓のβ細胞にある2つのスイッチ(受容体)を同時に押すようなイメージです。 これにより、血糖値が高いときだけ強力にインスリン分泌を促してくれます。
② 驚きの体重減少効果
ここが患者さんの関心が高いポイントですよね。 GLP-1による「お腹が空きにくい」作用に加え、GIPとの相乗効果で、従来の薬剤よりも高い体重減少効果が報告されています。 (※ただし、あくまで「2型糖尿病治療薬」ですので、美容目的の使用はNGですよ!)
3. 使い方のルール(週1回・4週刻み)
使い方は、オゼンピックなどと同じく「週に1回」の皮下注射です。 デバイスは「アテオス」というオートインジェクターで、針の取り付けが不要なため、手技はとても簡単です。
ただし、用量調節には厳格なルールがあります。
💡 チルゼパチドの増量ルール
- 開始: 2.5mgからスタート(4週間固定)
- 維持:5mgへ増量(ここが基本の維持量)
- 調整: 効果不十分なら、4週間以上の間隔を空けて2.5mgずつ増量可(最大15mgまで)
「早く効かせたいから」といっていきなり5mgから始めたり、2週間で増量したりするのは副作用のリスクが高まるのでNGです。
4. 【最重要】指導で気をつけるべき「副作用」
効果が強力ということは、体への影響も大きいということです。 薬剤師として必ずチェックすべきは、以下の3点です。
① 消化器症状(初期は特に注意)
悪心、嘔吐、下痢などは、使い始めや増量したタイミングで出やすいです。 「最初は少しムカムカするかもしれませんが、体が慣れてくると落ち着くことが多いですよ」と、あらかじめ伝えて不安を取り除きましょう。
② 糖尿病網膜症の悪化
これが一番怖い落とし穴です。 HbA1cが高かった人が、強力な薬で急激に血糖値が下がると、一時的に網膜症が悪化する(治療後網膜症)リスクがあります。
- 指導のコツ: 「最近、眼科の検診は受けましたか?」と必ず確認しましょう。未受診の場合は、投与開始前に眼科受診を勧めるのがベストです。
③ 妊娠中はNG
動物実験で胎児への影響が報告されています。妊娠する可能性のある女性には使用できません。
まとめ:なお先生の「臨床の目」
チルゼパチドは、間違いなく糖尿病治療の「新しい切り札」です。
例えるなら、これまでのGLP-1受容体作動薬が「片手でインスリン分泌を支えていた」としたら、チルゼパチドはGIPというもう一本の手を加えた「両手での強力なサポート」と言えます。
しかし、どんなに良い薬も「魔法」ではありません。 食事・運動療法という土台があってこそ、この強力な「両手」が活きてきます。
「薬が強いから何を食べても大丈夫」と誤解されないよう、私たち薬剤師がしっかりと食事療法の重要性も伝えていきましょうね!
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